2010年の秋。調子が良かった肌がいきなりおかしくなった。痒み、ただれ、赤み、じんましんのような細かいブツブツ、酷いニキビが大量に出来、 全盛期を彷彿とさせるかのようなブツブツっぷりで、私の皮膚は終わった。
原因はわかっており、角質培養で肌の調子がよくなったのをいい事に、市販のケミカルコスメを多用、 シャンプーもアミノ酸シャンプーを使いまくっていたからだ。 市販のコスメは落ちにくいから、角質培養で決めたルールもゆるゆるになってしまい、結果ゴシゴシ洗いをしてしまっていたのです。 擦りすぎにより肌バリアが崩壊しいるのにもかかわらず、その後それに気付かずにケミ物を乱用してしまい肌がおかしくなってしまったのでしょう。 せっかく一生懸命やってきたのに、悪化するのはあっと言う間ですね。角質培養の2年間?がワンシーズンでぱぁですよ。治るのはめちゃくちゃ時間がかかるのに。自業自得なのでしょうがないけど
まーなってしまったものは仕方がない。それからは角質培養のルールをきちんと守り試行錯誤しつつ頑張っていた。 そして、2010年の12月。相変わらず顔の皮膚は終わっていたのですが、ある事をすごく気をつけるようにしたら、顔の痒みはかなり軽減したし、赤みが若干引いたのです。 さらに、2011年の1月。どんどん肌の調子は良くなってきている(とは言っても、まだまだですが)。どうやらこのある事を気にするってのは正解だったようだ。
さて。引っ張りすぎましたが、そのある事とは「脂肪酸」の事です。これについて忘れないように書いておこうと思います。
**脂肪酸の種類**
脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれる。脂肪酸は、炭素Cと水素Hの集まった脂肪族(化合物:原子の集まり)とカルボキシル基COOH(官能基:科学的な性質を化合物に与える原子群)がくっついたもの。 脂肪族は、炭素を中心として水素と結合したものです。炭素は四つの原子と、水素は1つの原子と結合でき、これがうまいこと綺麗に結合したものが飽和脂肪酸。
例:カプリル酸(8:0 C8H16O2)
上のはカプリル酸なんですが、炭素の四つの手にうまい具合に水素や官能基がくっ付いている。これが飽和脂肪酸。
そして、不飽和脂肪酸とは、途中にある炭素が水素とくっ付かず、隣の炭素と二重に手をつないでしまったもののこと。
例:オレイン酸(18:1 C18H34O2)
左から9番目のところが水素とくっ付かず、隣の炭素と仲良く手をつないでしまっている(赤矢印のところ)。よく聞く「n-9」「ω(オメガ)-9」とか言ってるのは、 9番目のところが二重結合している脂肪酸なのよーって事だったんですね。そして、これまたよく見かける脂肪酸の隣の数値は、「炭素の数:二重結合している数」だったんですね。
不飽和脂肪酸には一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸があり、一価不飽和脂肪酸は二重結合が1箇所だけの場合で、多価不飽和脂肪酸は二箇所以上の場合にそう呼ばれる。 上のオレイン酸を例に挙げると、オレイン酸は一箇所だけ二重結合(不飽和)しているので、一価不飽和脂肪酸となる。
炭素数が7以下のものを短鎖脂肪酸、8〜10のものを中鎖脂肪酸、12以上のものを長鎖脂肪酸という。
**植物油**
大まかに言うと植物油は、1つのグリセリンに3つの脂肪酸がくっついたトリグリセリドという物が集まったもの(約80%)です。 グリセリンは脂肪族にヒドロキシ基OH(官能基)3つがくっ付いた三価アルコールです。
グリセリン + 脂肪酸(3つ)
↓
トリグリセリドと水(3つ)
グリセリンと脂肪酸が一緒になる時、脂肪酸はカルボキシル基COOHのOHを離しアシル基CO(置換基)となり、グリセリンはヒドロキシ基OHのHを離し、2つは結合。 そして、離されたOH、Hもくっ付き水H2Oが発生する。これをエステル結合R−COO−R'(Rは炭化水素の事)(グリーンで囲ってあるところがエステル結合部分)という。
植物油は、脂肪酸の種類(飽和 or 不飽和《一価or多価》)や、グリセリンにエステル結合する脂肪酸の種類などの違いで、効果が決まってくるのですね。
**人間の皮脂**
人間の皮脂は、遊離脂肪酸25%、トリグリセリド25%、モノグリセリド・ジグリセリド10%、スクワレン5%、コレステロール1.5%、コレステロールエステル3%、ロウエステル20%で出来ている。
トリグリセリドが肌の上で分解されていく過程で出来るのが、遊離脂肪酸(脂肪酸のみ)とモノグリセリド(脂肪酸1つとグリセリン1つ)・ジグリセリド(脂肪酸2つとグリセリン1つ)。 遊離脂肪酸は肌に刺激になることもあるが、肌を弱酸性に保つには必要なものらしいです。
ロウエステルはロウですので、おなじみのホホバや蜜蝋、ラノリンなどのロウです。
脂肪酸の大体の内訳は、ラウリン酸4%、ミリスチン酸7%、パルミトレイン酸21%、パルミチン酸20%、オレイン酸15%、ステアリン酸4%、リノール酸5%。
植物油などを顔に塗る場合、上の数値に近ければ近いほど良いということになるのですね。
**石鹸**
石鹸は油脂(トリグリセリド)に水酸化ナトリウムNaOHや水酸化カリウムKOHなどを加え鹸化させたものです。トリグリセリド1つに付き、3つの水酸化ナトリウム(水酸化カリウムも)が結合します。
トリグリセリド + 水酸化ナトリウム(3NaOH)
グリセリンと脂肪酸塩になる
すると、グリセリンと脂肪酸塩が出来ます。脂肪酸塩に洗浄能力があり、これが石鹸作りではキーポイントになります。以下、脂肪酸塩の種類とそれぞれの働き(SoftWater&Soap様のHPより引用させていただいております。
)。
脂肪酸塩の働き:SoftWater&Soap様のHPより引用させていただいております。
aの所ですが、カプリル酸・カプリン酸の「遊離脂肪酸」が特に肌への刺激があるらしいです。しかし、日本の食用であるココナッツオイルはこの遊離脂肪酸が除去されているそうですので、
さほど心配しなくても大丈夫かもしれません(詳しくはSoapBoMBlog: ココナッツオイル 肌への刺激−カプリル酸、カプリン酸除去オイルがあるって?−
)。
bの所の「選択洗浄性」とは、「角質細胞の脂質(細胞間脂質)は残し、皮脂腺の脂質(皮脂膜)を汚れとともに洗浄すること」なのだそう (細胞間脂質については私のHPをご覧ください)。なので、あまり洗いすぎると肌バリアが壊れてしまうかと。
cの所ですが、オレイン酸の洗浄力が強いという意味は、「細胞間脂質をよく落とし、皮脂膜をある程度残して洗う」という事。なので、あまり洗いすぎると肌の中身が乾燥してしまうかと。
あと、炭素数の多い飽和脂肪酸は水に溶けにくく、石鹸カスが出来やすい。不飽和脂肪酸は酸化しやすいとのこと。
石鹸は水に溶けると、脂肪酸イオンRCOO-とナトリウムイオンNa+にわかれます。そして、その水が軟水の場合は、脂肪酸イオンRCOO-は、脂肪酸とヒドロキシイオンOH-にわかれます。 この時発生した脂肪酸は肌へくっ付き潤いとなります。
しかし、これが硬水の場合は、脂肪酸イオンRCOO-は、水道水中のカルシウムやマグネシウムと結合し、石鹸カス(金属石鹸)を発生させます。この石鹸カスが肌に付着すると、
肌がつっぱったように感じますが、肌の状態が健康な人は時間が経つと共につっぱり感が解消されます。しかし、肌の状態が不健康な人の場合はいつまで経ってもつっぱったままなので、
弱酸性の化粧水を使うなどして、肌の状態を元に戻してあげる必要があります。
**肌に直接付く脂肪酸をコントロールする**
さて、これが今日の本題です(笑)。冒頭の「気をつけていること」というのがこれなんです。
ではどのようにコントロールするかですが、人間の皮脂のところで説明した皮脂膜に近い成分を使うことや 脂肪酸の大まかな内訳のパーセンテージに近づくようにするという事です。
私の今のケアは「温泉水(肌の様子を見てグリセリンをプラスしたりする)を塗布した後、オイルで蓋をする」です。直接肌に付く脂肪酸はオイルですよね。これに関しては、
私の肌が終了した当初、オイルというオイルは全て反応が出てしまったので、今まで使っていた物はもちろん使用を中止し、
高級脂肪酸と高級アルコールがエステル結合したロウであるホホバオイル(wiki:Jojoba oil
)
にチェンジした。ところが、待てど暮らせど肌の状態は良くならず。何故だろうと悩みつつ、そんなに早くは治らないか・・・と、引き続きこのシンプルケアを行っていた。
私のうちは風呂場だけ軟水ですので、石鹸洗顔後、顔が突っ張ったりせずとても快適です。 しかし、風呂場での洗顔後から、ずっと顔が赤く、毛穴が開いているし、乾燥が激しい。そして、洗面所(これは硬水)での洗顔後も、肌の症状は同様で、 プラス石鹸カスでつっぱり苦しい。肌が終了してからと言うもの、ずっと優しく洗顔しているし、ケアもシンプルにしているのに、 一向によくならないのはやっぱり何か問題があるのではないか・・・とまたもや悩みました。
そして、ここで漸く気が付いたんです。そうです。石鹸です。軟水で洗顔した場合はダイレクトに脂肪酸が顔に付着しますし、 硬水で洗顔した場合の石鹸カスだって脂肪酸が含まれています。これが悪さをしていたんだ!
最近まで使っていた石鹸はこの時作ったオリーブとヘーゼルナッツオイルの石鹸。 うちのエクセルのデータに残っているこの石鹸のオレイン酸の数値は、なんと73%!!上の脂肪酸塩の働きにあるオレイン酸の項目を見ると、 細胞間脂質は洗っちゃうは、オレイン酸常駐で肌状態が最悪になってしまうとあるはで大変!このオリーブ&ヘーゼルナッツの石鹸は、即刻顔への使用は中止にした。
そして、市販の牛脂とヤシ油で作られている石鹸を購入(私が購入したのは、M mark 無添加せっけん
です)。
それで洗い始めたら、冒頭に書いた通り、顔の痒みはかなり軽減したし、赤みが若干引いてきました。にきびは相変わらずですが。
このM mark 無添加せっけんの牛脂とヤシ油の比率はわかりませんが、一般的な8対2の場合、オレイン酸の数値は約34%。 そして、選択洗浄性に優れた飽和脂肪酸が結構含まれている。にきびがある場合はオレイン酸の数値は40以下がいいのかな。今度試しに作ってみます。
手作り石鹸を作っているくせに、「石鹸は汚れを落とすもので、保湿効果なんて期待するものではない」と思っていたのですが、違いましたね。 「石鹸は汚れを落とすものだが、保湿効果もある」。ですから、使う石鹸の脂肪酸をちゃんとチェックしないと、痛い目を見ますね・・・。激しく勉強になりました。
今はこのサッパリ石鹸で洗った後、スキンケアの〆に使う蓋オイルは、毎日使うものとしてロウ多めの軟膏を使い(その軟膏ラノリンと蜜蝋を含むクリームのレシピはこちら)、たまにのケアに、オレイン酸やパルミトレイン酸が低めで、飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸メインの、
かつ抗酸化物質を含むベリー系のオイル(クランベリーシードオイル
やラズベリーシードオイル
)や、軽めのサッパリオイルである中鎖脂肪酸のみの分留ココナッツオイル(wiki:Coconut oil
)を使っています。
今の自分は、長鎖脂肪酸(オレイン酸・パルミトレイン酸は除く)はピンポイントに使うとグンと肌の調子よくなるのですが、毎日使いに持ってくると栄養過多で途端に肌がおかしくなるので(それがたとえリノール酸やリノレン酸でも)、毎日使いには中鎖脂肪酸以下のオイルとロウしか含まないクリームが一番調子が良いみたいです。なので、私にとって長鎖脂肪酸はたまにのスペシャルな栄養剤という位置付けです。
愛用のロウ多め軟膏。レシピはこちら
そして、パックやマッサージなどをする場合には、オレイン酸やパルミトレイン酸が多いものも使いますが、肌に過剰に残らないように、使用後は必ず石鹸で落とすようにしています。 これらリッチなオイルは、あくまでもスペシャルケアとして使用するのが、今の自分には、吉のようです。
肌状態が悪い時に、何もケアを変えていないのにもか関わらず、さらに肌質が悪化したりすると「今のケアは大丈夫なのか。本当によくなるのだろうか。」という不安がいつも頭の中をグルグルして暗くなります。 しかし、色々調べるとそういった不安が少しは解消されます。そして、「きっと大丈夫。このまま続けていれば少しは良くなるはず!」てな具合に気持ちがあがります。 こういうプラスの気持ちは肌にも効果大ですよね。今回の肌終了事件は本当に辛いことでしたが、ある意味色々知ることが出来、これからの肌ケアにはプラスになったように感じます。
[手作りスキンケア]